「こっそり改憲は許さない」(東京新聞)

年のはじめに考える こっそり改憲は許さない
           東京新聞1月9日付け社説


集団的自衛権の行使解禁を目指し、国家安全保障基本法の制定をもくろむ安倍政権は、改憲の手続き抜きで「国のかたち」を変えようとしています。

布石は打たれてきました。昨年夏、参院選挙が終わり、3年間は国政選挙がない無風状態に入るや、内閣法制局長官を集団的自衛権の行使容認派に交代させました。安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が行使容認の報告書を提出するのを見越した人事です。

「憲法9条で許容される必要最小限の範囲を超え、行使は許されない」としてきた政府見解を覆そうというのです。

◆安保基本法を提出へ

報告書は新年度予算成立後に提出され、閣議了解される見通しです。「違憲」を「合憲」に一変させる解釈改憲を確実にするための「立法改憲」が国家安全保障基本法の制定にあたります。法案は通常国会の終盤か、秋の臨時国会への提出が見込まれています。

国家安全保障基本法案(概要)は自民党が野党だった2012年7月、党総務会で満場一致で了承されました。当時は、自民党議員による法案提出が見込まれていましたが、安倍首相は内閣から提出することを明言しています。

概要をみると、安全保障政策を進めるためのロードマップ(行程表)を兼ねていることが分かります。第三条「国および地方公共団体の責務」は、秘密保護のための法律制定を規定し、第六条「安全保障基本計画」は安全保障に関する長期的な計画の制定を義務づけています。

これらは昨年暮れの特定秘密保護法と国家安全保障戦略の制定につながりました。そして国家安全保障戦略は、概要の第12条「武器の輸出入等」を反映して、武器輸出三原則の見直しを打ち出しました。

◆国民に「国防の義務」

安倍政権はパズルをひとつひとつ埋めるように概要の項目を先取りしています。


条文で驚かされるのは、第4条「国民の責務」があることです。国民に安全保障施策に協力し、寄与することを求め、「国防の義務」を課しているのです。

これは2012年4月、自民党が発表した改憲草案の前文にある「国民は国を自ら守る責務を共有する」と同じ趣旨であり、国家安全保障戦略に書き込まれた「愛国心」に通じます。

愛国心や国防の義務を国民に求めること自体、国家主義への傾斜がうかがえます。

そう考えれば、自民党改憲草案が「公益および公の秩序」によって、基本的人権や「知る権利」を制限しようとする理由が分かります。国家のために国民の自由や権利を縛ろうというのです。

国民の自由や権利を守るため、国家を縛る日本国憲法の「立憲主義」を逆転させているのです。

概要の第8条「自衛隊」には、「必要に応じ公共の秩序の維持に当たる」とあります。自衛隊法には治安出動規定があるものの、発動されたことはありません。過去に一度だけ、1960年の安保闘争で発動が検討されました。

そのときの首相が安倍首相の母方の祖父、岸信介氏でした。

半世紀を経て国会周辺のデモをテロと呼ぶ自民党幹部が出てきたとはいえ、自衛隊に「公共の秩序」を担わせようとする戦前の憲兵隊をほうふつとさせる発想には、あぜんとするほかありません。

第10条は集団的自衛権の行使を定め、別途、集団自衛事態法を規定するとあり、第11条は「国連憲章に定められた安全保障措置等への参加」を明記しています。国連の安全保障措置には多国籍軍への参加が含まれます。安全保障措置「等」とあり、必ずしも国連決議を必要としていません。

例えばイラク戦争の英軍のように、自衛隊が米軍とともに最前線で戦うことが可能になります。

国家安全保障基本法が成立すれば、憲法9条は空文化します。法案なので3分の2の国会議員の賛成や国民投票が必要な改憲規定と比べ、なんとお手軽なことか。自民党の議員全員が賛成すれば衆参の過半数を占めて法案は成立、憲法は有名無実化します。

◆国会で堂々の議論を

それこそ麻生太郎副総理がナチスを引き合いに出して語った、こっそり改憲する手口でしょう。

安倍首相は「日本を取り巻く安全保障環境がますます悪化している」と述べ、集団的自衛権行使を含む解釈改憲の必要性を強調します。改憲が必要というなら、国会論議を通じて多数派を形成し、国民投票法にのっとり、国民の意見を聞くのは当然のことです。

日本は専制国家ではありません。国民は人であって、人柱ではないのです。
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by kenpou28 | 2014-01-09 10:46
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