「秘密保護法案  将来に禍根残す、廃案にせよ」(京都新聞)

秘密保護法案  将来に禍根残す、廃案にせよ
    (京都新聞社説、2013年11月9日)


国家の情報統制が強くなり、自由にものが言えなくなる-。そんな息苦しい時代の入り口に立っているように感じる。

特定秘密保護法案が衆院で審議入りした。安全保障に関する情報を政府が「特定秘密」に指定し、漏洩を防止するのが狙いだ。

外交・軍事に関し、外国や国民に知られたくない情報があるのは事実だろうが、政府は不都合な情報ほど隠したがる。例えば、武器購入をめぐる防衛省の不祥事は、防衛上の秘密とされて明らかにされない恐れがある。

「何が特定秘密で、いつ解除し、公開するか」という判断はすべて政府に委ねられる。特定秘密が政府に恣意(しい)的に指定され、重要な事実が半永久的に国民の目から隠されてしまいかねない。

法案は国民主権と基本的人権の尊重をうたう憲法と相いれない。国のあり方を変質させる危険な法案に反対する。各党は党利党略を捨てて協力し、廃案にすべきだ。

特定秘密は防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野で、特に秘匿すべき情報を閣僚らが指定する。秘密を漏らした公務員には最高10年の懲役を科す。

 際限なき拡大を懸念

安倍晋三首相は、日本の安全保障環境は厳しく「情報漏洩の脅威が高まっている」と、今国会での成立に意欲を示すが、法案には問題点が多すぎる。

政府は2007年から指定している「特別管理秘密」をそのまま特定秘密に横滑りさせるようだ。その数は42万件にのぼるという。

これらを4分野に振り分けるようだが、加えて法案では「その他重要な情報」も特定秘密に指定できる。こんな曖昧な規定では、マル秘扱いが際限なく拡大する恐れがある。

政府は指定件数を定期的に公表するというが、何の意味もない。指定の統一基準を有識者会議で策定するが、基準どおり運用されているのか検証する術がなく、結局はブラックボックスだ。

特定秘密は、閣僚の判断で5年の指定期限を何度でも延長でき、30年を超える場合のみ、内閣の承認が必要となる。

安倍首相は30年を超えて指定を続けるケースとして「秘密解除により相手国が対抗措置を講じる恐れがある場合」を挙げたが、首相がそういう判断をした事実さえ国民は知ることができない。

公文書管理法は「公文書は国の歴史的事実の記録であり、国民共有の知的資源」とし、保存期間を定めるよう省庁に求めている。

にもかかわらず、防衛機密は公文書管理法の適用外とされ、保存期間を過ぎれば首相の同意を得て廃棄されてきた。これでは秘密を闇から闇に葬るに等しく、国民の不信は募るばかりだ。秘密保護の前に、将来の確実な公開を担保する法整備こそ優先すべきだ。

 重い刑罰、萎縮招く

違反者への重い刑罰も問題だ。漏らした公務員には、既存の国家公務員法や自衛隊法の規定を超える量刑が科せられる。「漏洩をそそのかした」とみなされれば、市民や記者も処罰対象になる。

法案は「報道取材の自由に十分配慮しなければならない」と記すが努力規定にすぎない。安倍首相は「捜査機関も取材の自由に配慮して法を運用」と答弁したが、そもそも取材や報道は権力に許可を得て行う性質のものではない。

厳しい罰則に公務員が萎縮し、メディアや市民への情報提供をためらうことも心配だ。

国会議員に対しても、政府が特定秘密を提供するのは非公開の秘密会に限られる。「安全保障に著しい支障を及ぼす恐れ」があれば、それすらしなくてよい。

秘密会や独自調査で得た特定秘密について、議員が同僚や専門家に相談すれば、処罰対象になる。これでは、政府を監視すべき議員の活動は著しく制約される。国政調査権の侵害ではないか。

そもそも特定秘密保護法は、先ごろ創設法案が衆院を通過した国家安全保障会議(日本版NSC)を機能させるための手段だ。米国に外交・軍事情報を提供してもらうために、秘密保護法制を整えて信頼を得ようというわけだ。

 危うい国権の強化

国民の目をふさいでまで日米同盟を強化し、何を目指すのか。安倍政権は来年、集団的自衛権の行使容認に向けた国家安全保障基本法の成立を目指すとみられる。一連の「国権強化」の流れは、戦後築いてきた平和国家としての土台を崩してしまう。

こうした動きに、野党は結束して立ち向かうべきだ。民主党は情報公開制度の充実を、日本維新の会は秘密指定を「30年」に限定するよう、修正案を提出しているが、いずれも小手先だ。

民主案は、政府が公文書を非開示とした場合、裁判所が当否を判断する「インカメラ審理」が目玉だが、政府が文書を提出せず審理を拒否できる以上、意味は薄い。形だけの修正で賛成に転じるのなら、国民を裏切ることになる。

安易に法案修正を持ち出せば、成立に手を貸し、後世に禍根を残す。自民のリベラル勢力も含め、心ある政治家が共闘して法案成立を阻止してほしい。

国民も危機感を持って国会論戦を注視してほしい。防衛産業だけでなく、政府と接触する民間活動の裾野は広い。ささいなきっかけで市民が特定秘密に触れ、処罰される恐れがあるのだから。
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by kenpou28 | 2013-11-13 11:14
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